ここでしか聴けないコラボで太宰の言葉が空間を満たす、特別な時間を過ごしませんか。
皆様のご参加をお待ちしております。
【2023年6月19日 太宰治生誕日朗読会】
太宰の言葉と過ごす時間。
【第13回】太宰治生誕日朗読会 企画 アオモリ文藝
◇と き 2023年6月19日(月)15:30〜17:00(開場15:00)
◇ところ 太宰治疎開の家/旧津島家新座敷
青森県五所川原市金木町朝日山317-9
※太宰治記念館斜陽館、津軽鉄道金木駅から徒歩4分
◇作 品 太宰治作『ヴィヨンの妻』
◇出 演 【朗読】原 きよ 鎌田 龍 【音楽】葛西 愛子
◇参加費 1,000円(当日受付後は館内終日出入り自由。記念品あり。)
◇定 員 25名/椅子席
◇申し込み・お問い合わせ
・電話0173‐52‐3063
・facebookへのメッセージ/太宰治疎開の家旧津島家新座敷
・太宰治疎開の家ホームページ https://hsmoji.wixsite.com/dazai/about-8
◇出演者プロフィール
■朗読:原 きよ(はらきよ)
大分放送アナウンサーを経て、現在は朗読家・ナレーター・役者。朗読を長谷由子氏に師事。太宰治作品朗読をライフワークとして三鷹を拠点に太宰ゆかりの場所でのライブ活動。三鷹ネットワーク大学、カルチャーセンターなどで朗読・話し方講座の講師。(株)マック・ミック所属。朗読集団「コトザウルス」、劇団「シアターRAKU」所属。
■朗読:鎌田 龍(かまたりょう)
弘前市出身。「ひろさき演人」主宰。リーディングライブ『卍の城物語』シリーズで津軽為信役として主演をつとめる。第2回浪岡バサラ文学賞準大賞、第61回新春短編小説(デーリー東北新聞社)新人賞を受賞。俳優・作家として、また、演技・創作指導のワークショップ講師など、青森県内で幅広く活動を行っている。
■音楽:葛西 愛子(かさいあいこ)
弘前市出身。サクソフォンカルテット「ラピスラズリ」主宰。アンサンブルコンテストでは東北代表として2度に渡り全国大会銀賞受賞。ソロコンサートや浪岡中世の館コンサートなど多数出演。今年度は弘前城雪灯籠まつりプロジェクションマッピングの音楽に演奏で参加。弘前市立東目屋中学校教諭。
★館内では感染防止のため、マスク着用と手指消毒を推奨しています。
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きのうは太宰治生誕日朗読会でした。
今年はできるのか?どうだろう?と考えながら、
2年越しの再開です。
この度は換気を考慮して、普段は使っていない2階に会場を準備しましたが、
強い雨が降った場合に雨音が朗読の邪魔になるおそれがありました。
何日も前から雨予報で心配だった中、昼前から降ったり止んだり。
土砂降りの音を聞きながら、会場の音響や配信の設置は完了しました。
やがて、開始1時間前から、傘を差して続々とご来場されるお客様。
そして、開始直前にぴたり、雨が上がるという幸運!
津島家新座敷築百年記念の太宰治朗読会は
朗読家・原きよさんと津軽カタリスト主催・平田成直さんに出演していただきました。
作品は、甲府の空襲の体験が書かれた『薄明』を原さんが読み、
若い女性の部屋での男の葛藤を描いた『朝』をお二人の掛け合いで読んでいただきました。
百年の時を記憶してきた家に、ある時期、太宰治が家族と暮らした。
ここでたくさんの作品が生まれ、それが現在に読み継がれている。
生誕日朗読会は太宰治の書斎をその作品の言葉で満たすというテーマで開催しています。
今回の会場には、新座敷で役立てほしいと、
ある太宰ファンの方からご寄贈いただいた、たくさんの本や関連資料を展示しました。
参加してくださった皆さん、
出演してくださったお二人、
開催のためにご協力くださった方々、
それぞれの太宰作品への思いがあり、それぞれのかかわり方があるなかで
この空間と時間につないでくれたいろいろなご縁に感謝しております。
この度は朗読会にお集まりいただきありがとうございました。
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【朗読会開催のお知らせ】
太宰治疎開の家では下記の要項で太宰治生誕日朗読会を開催いたします。
太宰の書斎がある空間を太宰治の言葉で満たす恒例の催しは、3年ぶりの開催となりますが、この度は感染症拡大防止のために定員を小さく、座席の間隔を広くして、換気の良い特設会場で行います。
朗読作品?は、昭和20年7月、太宰治が一家で疎開した甲府市で大空襲を逃れた体験をもとに書かれた『薄明』。?は、知り合いの女性の部屋での一夜をスリリングに描く『朝』を二人の朗読者で読みます。
定員に達し次第受付を終了します。どうぞご参加をお待ちしております。
【第12回】太宰治生誕日朗読会 津島家新座敷築百年記念
2022年6月19日(日)
◇時 間 14:00〜15:30
◇ところ 太宰治疎開の家/旧津島家新座敷
会場:館内2階(エレベーターはございません。)
青森県五所川原市金木町朝日山317-9
※太宰治記念館斜陽館および津軽鉄道金木駅から徒歩4分
◇作 品 『薄明』太宰治作 『朝』太宰治作
◇出 演 原 きよ 平田成直
◇参加費 1,000円(当日会場で支払い)
◇定 員 20名/すべて椅子席
◇申し込み・お問い合わせ
・太宰生誕日朗読会 | Facebookよりメッセージへ
・Eメール hsmoji@yahoo.co.jp
・電話0173‐52‐3063(白川)
◇出演者プロフィール
原 きよ(はらきよ)
大分放送アナウンサーを経て、現在は朗読家・ナレーター・役者。朗読を長谷由子氏に師事。太宰治作品朗読をライフワークとして三鷹を拠点に太宰ゆかりの場所でのライブ活動。三鷹ネットワーク大学、カルチャーセンターなどで朗読・話し方講座の講師。(株)マック・ミック所属。朗読集団「コトザウルス」、劇団「シアターRAKU」所属。
平田 成直(ひらたまさなお)
2009年に芦野公園駅で上演された県民参加型演劇『津軽』に役者として出演したことをきっかけに、現在は津軽ゆかりの文学作品を題材として、弘前市「太宰治
まなびの家(旧藤田家住宅)」を拠点に活動する声優劇団「津軽カタリスト」主宰。
◆ご来館の際には、感染防止のため、マスク着用と手指消毒にご協力ください。
◆今後の感染症拡大などの状況に応じて開催予定変更となる場合があります。
太宰治疎開の家ホームページ https://hsmoji.wixsite.com/dazai
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震災やコロナ禍だけでなく数年のうちにうねる様に世相が変わり、地域が変わるのをこの家を通して体験してきましたが、150年から数十年前までの過ぎてしまった時代をこの家を通して知り、伝えているうちに、もう15年たったのかという不思議な気持ちでいます。
小さな山も谷も、太宰読者や出会った方々に支えて頂いて今まで続けてこられました。
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世良 啓さんは、太宰治疎開の家を公開して間もない頃、太宰生誕日の6月19日に見学に来てくださいました。
たしか「弘前ペンクラブのバスに乗って芦野公園の太宰治生誕祭に参加したものの、帰りのバスに置いて行かれてしまったので、せっかく金木に来たのだし急ぐ理由も無くなったし立ち寄りました。」という初めてだったと思います。
ちょうど叔父と叔母を弘前まで車で送るので一緒に乗って行きますか?と、それからの長いお付き合いです。
その後、度々太宰さんに興味のあるご友人を連れてきてくださり、未年生まれの同い年で、国語の先生で、文筆家であることも知りました。好奇心旺盛で、実は無防備でなかなか面白いちゃかしであることも知りました。それから暫くして2011年1月、小説『ロングドライブ』で地元新聞主催の第1回東奥文学賞を受賞されたのを紙面で知って驚きました。
そんな世良さんがタウン誌・月刊『弘前』にエッセイ「多々他譚」を連載してきました。2011年の震災の後からだそうです。
月刊『弘前』は主に弘前市の書店やカフェなどに置かれており、年に10回ほどしか弘前に行かない僕はほんの数冊しか手に取ることができなかったのですが、見開きの短文が面白おかしく、「ああ世良さんだ〜」とクスリ。それが2021年で10年、連載120回になったそうです。それらを収録した『弘前多譚』。世良啓さんの初めての単行本を当館でも販売させていただくことになりました。
真っ白な表紙には小さな飴玉のような林檎。ご自身で一冊ずつ掛けた桜色のオビには
山は岩木山、城は弘前城、それが日本一なんていう
父みたいな津軽人には絶対なるまい!と思ってた
僕はいま78回「ようこそ」(2017年)を読み終わったところ。弘前のカフェ「時の音」で東京から弘前に移住した女の子と出会ったお話。これまで読んでいなかった回をワクワクしながらまとめて読んでいます。
巻末のタイトル索引は掲載年順にびっしり120。読みたくなっちゃうでしょう。
連載が始まったのが震災の年。
まえがきには
あれから変わってしまったこと、変わらなかったこと、
忘れてしまったこと、忘れられないこと、いろんなことがありましたね。
私の10年はこんな風でした。あなたはどんな10年でしたか。
世良さんが綴った120か月を読んで、自分の10年のいろんな記憶が芋づる思い出されてくる。そんな『弘前多譚』当館でも販売しています。弘前の方じゃなくてもぜひどうぞ。
北方新社 263ページ ¥2,200(税込)
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昭和20年7月30日その日。暑い、暑い、こんな真夏に甲府から津軽に再疎開する様子を美知子夫人が詳細に書き残しています。秋田県から青森県深浦に着き、幼子二人を連れて夫の後を歩く美知子さんの心中。汗をかきながら読んでいます。
太宰さん、随分マイペースでずれているようですが、きっと彼なりに一杯いっぱいにやってる。お酒、飲みたかっただろうな。
明日はようやく金木の生家に、という日。
『回想の太宰治』津島美知子著より
深 浦
一夜で焦土と化した甲府を出てから三日目のお昼頃、私たち一家は奥羽線の列車で秋田県の日本海べりを北に向かっていた。
新庄で乗り換えてからは敵機来襲でおびやかされることもなく、川部でもう一度乗り換えれば今日中に五所川原まで、あるいは連絡がうまくゆけば金木に着くことも出来そうだったのだが、太宰が能代で五能線に乗り換えて、今夜は深浦泊りにしようと言い出した。前夜もその前夜も駅の構内でごろ寝して、暑いさ中の乳幼児をかかえての旅で私は疲れきっていた。一刻も早く目的地に着きたいとも思わないが、まわり道したくはなかった。しかし太宰の深浦泊りの目的が何にあるのかが察しが一刻も早つくので仕方なく同意して能代で降りた。日暮れまでには深浦に着けると思っていた。ところが連絡がわるくて五能線の発車まで長い時間待ったため、深浦駅に降りたときには夜になっていた。灯火管制の上、月もなく、足もとも見えぬ闇夜である。旅館は駅のすぐ前にあるものと、ひとりぎめしていたところが、まだかまだかというほど遠い。家並も見えぬ暗い夜道を、太宰は、同じ列車から降りた中年の人と道連れになって、元気よく先立って歩いてゆくが、そのあとに赤ん坊を背負い、四つの子の手をひいてとぼとぼ従いながら、私は次第に恨みがましい気持になってきた。
やっと左側のめざす旅館に着いたが、出入り口は固く閉ざされていて、太宰は懸命にその戸をたたき郷里の言葉で金木の生家の屋号と、昨年の五月泊めてもらったことを告げて、やっと二階の一間に通してもらうことができた。大分経ってから夕食の膳を二つ出してくれたが、この家のあるじらしい人は姿を見せず、十七、八歳の娘さんが給仕してくれた。前年の「津軽」の旅のとき、主人から特別のもてなしを受け、やまげん(”へ”の下に”源”)の勢力がここまで及んでいることを感じたことを太宰は記しているが、その主人は現われない筈、長患いの床に就いているとのことであった。娘さんはまた自分の在籍している学校(青森師範といったと思う)が、七月二十八日夜、青森市の空襲で焼失したこと、これから一体どうなるのだろうと、興奮気味に語り、窓も電灯も遮光幕で蔽って、手もとが僅かに見えるほどの暗い部屋で、とうてい、お銚子をと言い出すことが出来なくて、あてにして来た太宰が気の毒であった。甲府で罹災して以後も毎晩焼跡で飲んできていたが、甲府出発以来アルコールが全く切れていた。これではなんのためにまわり道して、深浦に泊ったのかわからない。
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今朝、最初の来館者は数カ月前にみえた中学生でした。
帰りに文庫本を5冊お会計。あれ?すべて『人間失格』です。力入ってますね。
「友達にあげたりします。」とのこと。
太宰さん、誕生日に熱心な読者のお嬢さんが来てくれましたよ。
ヤマセが吹いて寒い。お昼からは雨予報。
例年と違って太宰生誕祭などの催しも無いし、きっと来館者の少ない静かな記念日、と覚悟して
風で吹き溜まった庭の落ち葉を片付け、それから掲示物の制作をしておりましたら、次のお客様。
「こんにちは〜。今年も来ましたよ。お友達を連れてきました。」
さらに、
「こんにちは。誕生日はやっぱり金木に行かなくちゃと思って。」
そしてまたもや、
「ずっと前からこの日はお休みを入れてて、今日は従妹と来ました。」
と、ことごとくリピーターや生誕日朗読会の常連さんが代わる代わる来てくれました。
コロナ禍ですから、いつものこの日の様に大勢ではない。
けれどそうして一日が終わってみれば、純粋な初めてさんは一組だけだったという・・・
なんて有難いことだろう。
結局、当館はこの場所に愛着を感じて繰り返し訪れてくださる太宰ファンに支えられて
きたのだということを、しみじみと知らされた今日でした。
夕方になって雨。
特別ではないけど特別な
太宰さん、112回目のお誕生日ですよ。
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桜を見送り、新緑が目に優しい。寒くなく暑くなく、冬を超した身体がようやく調子が出てきた頃。そうだよ。五月のいまからがいちばんいい季節。と、りんごの花が咲くのを見ながら毎年思っている。
「五月」 草野 心平
すこし落着いてくれよ五月。
ぼうっと人がたたずむように少し休んでくれよ五月。
樹木たちが偉いのは冬。
そして美しいのは芽ばえの時。
盛んな春の最後をすぎると夏の。
濃緑になるがそれはもはや惰性にすぎない。
夏の天は激烈だが。
惰性のうっそうを私はむしろ憎む。
五月は樹木や花たちの溢れるとき。
小鳥たちの恋愛のとき。
雨とうっそうの夏になるまえのひとときを五月よ。
落着き休み。
まんべんなく黒子も足裏も見せてくれよ五月。
好いな。
心平さんも五月を特別な季節と感じて書いたのだ。
「そして美しいのは芽ばえの時。」そうだよなあ、と読む。
「惰性のうっそうを私はむしろ憎む。」そうだ惰性はよくない、と読みかけて・・・いや待てと思う。
僕も20代、30代の青年期はそう疑わなかったかもしれない。でも人生の中で、中年期はたしかに惰性を望むようになっていた。きっと体調の変化を自覚するようになったせいだろう。これまで、僕がうかうかしていても、調子がいまいちでも、夏の日光や気温上昇や他の生物たちの生命活動が滋養となり、季節全体に漲る勢いによって助けられ育まれたような。僕が繰り返してきたのは平凡な毎日と少しの工夫、家族の暮らし。中年期に惰性という力に頼れなければ、もっとしんどかっただろうと思う。
しかし今、「五月は樹木や花たちの溢れるとき。」眼前の新緑はすがすがしく美しい。
ことしは殊のほか春の進みが早かったようだが、近ごろ急拡大や激増は憎まれるのですよ。
「雨とうっそうの夏になるまえのひとときを五月よ。」
変化はおだやかに、夏はゆっくりと来てほしい。
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久しぶりに当館・陶工房ゆきふらしギャラリーでの展示会があります。
いつもの展示スペースからはみ出して、どんな展示になるのか、
私たちも今から楽しみです。
ただいま作陶奮闘中!
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たのし・ふるし・いとおしむ暮らし
陶工房ゆきふらし × 古家具グリュノワ展
& のみものや わんど
2021 4/28(水)〜5/2(日)
会場:太宰治疎開の家
OPEN 9:00~17:00
問:青森県五所川原市金木町朝日山317-9
0173-52-3063 太宰治疎開の家
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工房で春の芽吹きを感じながら作ったゆきふらしの陶器たちと、
大切に使われてきた古い時代の道具たちとをコラボして、
築百年の太宰治疎開の家にて展示販売いたします。
ひとつひとつ手に取って、楽し・古し・いとおしむ暮らしを感じてみてください。
◆古家具・古道具グリュノワ(鶴田町)展示品をご購入できます。
◆移動式珈琲店 のみものや わんど(弘前市)※土・日の2日間
のみ出店。体に優しいのみもの。ゆきふらしの器で飲めます。
★先着30名様限定★
陶器3000円以上お買上げの方に陶工房ゆきふらし特製 左馬小皿(非売品)進呈!
画像:猿田千帆さんのFBより
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春らしい気温が続く中、サンシュユが咲き、庭の地面にポッポッと数種類の花を見つける。
太宰治疎開の家も1〜2月は雪の下に埋まっているようでしたが、3月中頃からは卒業記念の旅や一人旅のお客様が来て少し希望が見えました。1年余続いているコロナ禍。繁忙期やメリハリのない日々で「がんばりどころ」が無く気が曇っておりました。この間に金木町の通りも寂しく停滞していましたが、これから津軽三味線会館が再開するし、新たにOPEN予定のお店も2軒あります。今日で津鉄のストーブ列車期間が終わり、桜が咲くまでここから3週間ほどはまた静かになるので、調子のわるい腰を癒して自分もカリカリねじを巻き直す。ねじが空回りしないように、どうか第4波など大きくならないでおくれ。
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好天の土曜から雪の日曜。
今日、金木の気温は3℃です。夜に降った雪がスルスルと屋根から落ちてきます。
朝のストーブ列車に乗って駅から数組の旅行者が下りては来ましたが「太宰って人間失格書いた人だよ。」なんて薄い感じで通り過ぎていきました。
1年前に世界が急激に変わってしまい、この冬はいろんな意味で深い雪に閉ざされている。太宰治疎開の家は今年で開館14周年を迎えました。太宰さんが引き合わせてくれる数々のご縁のおかげで手探りながら、ここまで続けてこられたのはなんだか奇跡のようです。
どうなることやら。将来の燭光は見えないけど、雪の下には青い草が萌出る春を待っている。
どうにかなりますように。
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太宰治の「斜陽」にこんな場面がある。
「夏の花が好きなひとは、夏に死ぬっていうけれども、本当かしら。」
きょうもお母さまは、私の畑仕事をじっと見ていらして、ふいとそんな事をおっしゃった。私は黙っておナスに水をやっていた。ああ、そういえば、もう初夏だ。
「私は、ねむの花が好きなんだけれども、ここのお庭には、一本もないのね。」
とお母さまは、また、しずかにおっしゃる。
「夾竹桃があるじゃないの。」
私は、わざと、つっけんどんな口調で言った。
「あれは、きらいなの。夏の花は、たいていすきだけど、あれは、おきゃんすぎて。」
「私なら薔薇がいいな。だけど、あれは四季咲きだから、薔薇の好きなひとは、春に死んで、夏に死んで、秋に死んで、冬に死んで、四度も死に直さなければならないの?」
二人、笑った。
太宰治「斜陽」より
夏の花で好きなのは七月~八月に道端に群生するレースの布ような白い花。僕は名前を知らなくて勝手にレースフラワーと呼んでいた。たおやかに手を振るように揺れるのを見て、ああ夏が来た、と思わせる可憐な花で、初めて気に留めたのは十数年前だが、子供の頃には見たことが無いような気がする。そして今日ネット検索して初めてその花の名前を知った。「ノラニンジン」。野良人参?・・・がっかりである。貴婦人だと思っていたのに野良とは貶されたものだ。レースフラワーは別の植物らしい。
もうひとつ好きなのは「ネジバナ」。これは十年前に新座敷の周りを草取りしているときに見つけた。アスファルトの裂け目から数本、すっすっと細く伸びる可憐なピンクの花は下から先端に向かって螺旋状に咲いていて神秘的で見惚れた。DNA配列みたいに美しい容姿なのに、花屋では見たことがなかった。勝手にネジリ草と呼んでいたが、これは後にネジリグサという別名があることが判ったので名づけは当たりであった。ところが、或る年の春に草取りをしたときに、これをうっかり他の草といっしょに抜いてしまったらしい。その夏から螺旋が現れなくなった。しばらく後に遠くの道端や両親の家の庭にも自生していたのを見つけて毎夏見かけてはいたが、この場所から消えてしまったのはなにか寂しかった。
この八月、不用品の片づけをしていた時に、軒下に放置していた植木鉢の真ん中に立派なネジバナがすっと一本だけ奇跡のように花を咲かせていたのを見つけた。種は蒔いてないし、鉢で育てたこともないのに。神秘。
「自分の墓」という願望は無い。もし子孫がじじにお盆の花をと思ったら、これらを庭の隅に植えて自生させれば、切り花を買う必要が無い。
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それまではただ開けているだけという日が続いていましたが、「移動の自粛」が解除になってからは少しだけ観光客が動いている実感があります。7月になって太宰治記念館「斜陽館」が再開したことで、金木にみえた方もガッカリで帰ることが解消されたのではないでしょうか。このごろ来館されているのは県内や秋田、岩手あたりの日帰り圏の方が多いようです。比較的感染者の少ない地域とはいえ、太宰治疎開の家も感染防止に気を付けながら営業してまいります。青森旅行の際は、また、来たことがない近隣町村の方も近くをお通りの際はぜひお立ち寄りください。
今日は9月に予定されている旅行業者の視察について市役所の方が説明にみえました。コロナが収まらない中で社会や生活の形が変わってしまって今年は見通しがありませんが、来年は少しでも需要回復しますように。
ビオレUの容器にいたずらした。中身は正規品です。
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これまで、太宰治の生家があることで、この田舎町にも多くの観光客が訪れていました。疎開の家も大樹の陰に寄って継続してこられました。でもこうして旅行客の往来が止まってみると、自分は雲のように頼りないものに乗っかっているのだと思い知らされました。本当は2011年、あの震災の時にわかってしまったことが、今はさらに気持ち悪く底無しに進行中です。斜陽館、津軽三味線会館、物産館の休業が続き、太宰生誕祭もない状況で、確かな見通しはない。営業を続けている太宰治疎開の家は、われながら奇妙です。
コロナの影響が拡大して、いったいどうなるんだろうとネットにかじりついていたこの3月、これまで何度か疎開の家に来館されたというお客様から、本を差し上げたいとのご連絡を頂きました。名前を見ても失礼ながらお顔が浮かばなかったのですが、簡潔で、親しみを覚えるきれいな文章でした。そして内容に驚きました。来館者に見ていただく展示資料が貧弱な当館としては思いがけない僥倖でしたので、即答でお返事をしました。
贈ってくださったのは太宰治の初版本復刻シリーズです。
それからの毎日、来館者が途絶えた館内で、本棚に並べたのを時々読みかけたりしながら、本たちと対話しました。
君たち、どんなふうに展示されたい?場所は新座敷の床の間か、奥の押し入れか、はたまた・・・どんなケースに入れようか、いや幅広の本棚を作ろうか・・・答えはなかなか聞こえない。
でも、デビューの日だけは決めていました。6月19日。
営業を続けてその日を迎える予定があることが、自分には燭光になりました。
その日、斜陽館はまだ休業中で、生誕祭も朗読会も開けない。旅行の自粛が続く中でこの町に太宰ファンが来るのかもわからない。でも、もし数人でも太宰さんの書斎に座ろうと、来てくださる方があるなら、優しい太宰読者から手渡された32冊の本たちが待っています。
生誕111年の記念日からなにか変わる。どうにかなる、と信じたい。
これまでも折々に、太宰読者や旅人に助けられて12年やってこられたのです。
今日、準備した展示ケースに並べてみたら、壮観。本たちがノビノビとして見えました。
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◆Tシャツ:「人間失格」より、神に問う。信頼は罪なりや。をモチーフにしました。
◆Tシャツ:魚服記、女生徒、走れメロス、津軽、パンドラの匣、桜桃をデザインしています。
これまで毎年のように、生誕日に合わせたタイミングで新しいグッズを企画してきました。今年は太宰ファンの訪問が見通せない中で、ご来館の記念にと考えていた新商品がお蔵入りになるのも残念なので、オンライン限定のメモリアルグッズをこちらで販売することにしました。なので館内ショップ太宰屋の店頭にはありません。ポチっとクリックすると→オンラインショップDazai'sに飛びます。お気に入りの色を見つけて買っていただけるとうれしいです。商品はもう少し種類が増えるかもしれません。※ポチッとしたからといって即購入にはなりませんので、ぜひご覧ください。
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