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十年の疲労

 

もう限界なのだと、前にも書いた。

 

メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、

る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。

メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩

いて来る兄の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。

呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。

 

 

 

 

太宰治疎開の家の公開を始めて十年間、お客様の前で開いてみせた本が

もう駄目だ。

 

テープや糊で補修してここまで耐えたが、

開くたびに、ぱらと足元に表紙の欠片が落ち、ページの折り目が裂け、

きのうついに

一歩も走れなくなった。

メロス…限界。

 

十年は友の待つ刑場の門であったと思えばあっぱれ

王にも褒められよう。

 

特別なセレモニーはないが、太宰屋の本棚に殿堂入り。

二代目にたすきをわたしてゆっくりお休みくだされ。

 

満身創痍の英雄にもいつか会いに来てください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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